「添育(そういく)」を支える25の理論を巡る旅。
【技法編】の第3回目は、
解決志向ブリーフセラピー(Solution Focused Brief Therapy:SFBT)」です。
少し長い名前ですが、言っていることは驚くほどシンプルです。
「うまくいっているなら、それを続けよう。」
「うまくいっていないなら、違うことをしよう。」
これだけです。
しかし、私たちは日常で、この逆をやってしまいがちです。
うまくいっていないのに、「もっと努力させよう」「もっと厳しく言おう」と、
うまくいかないやり方を繰り返してしまうのです。
「原因」がわかっても、問題は解決しない
従来の心理学や医学モデルでは、「問題には原因がある」と考えます。
「お腹が痛い(問題)」→「ウイルスが入った(原因)」→「薬で殺す(解決)」。
これは正しいアプローチです。
しかし、人間の心や行動の問題でこれをやるとどうなるでしょう?
- 問題: 子どもが勉強しない。
- 原因分析: 「やる気がないからだ」「基礎ができていないからだ」「親の遺伝だ」…
- 結果: 犯人探しになり、お互いに嫌な気分になるだけ。「で、どうする?」という答えは出てきません。
SFBTでは、「鍵穴(原因)の形を知らなくても、合う鍵(解決策)さえあればドアは開く」と考えます。
過去の「原因」ではなく、未来の「解決像」だけに焦点を当てるのです。
魔法の問いかけ「ミラクル・クエスチョン」
では、どうやって「解決像」を描くのでしょうか。
SFBTの代名詞とも言えるのが「ミラクル・クエスチョン」です。
「もし今夜、寝ている間に奇跡が起きて、今の問題がすっかり解決してしまったとします。
明日の朝、目が覚めた時、あなたは何を見て『あ、奇跡が起きて解決したんだ!』と気づきますか?」
「えー、そんなことありえないよ」と笑われるかもしれません。でも、想像してもらうのです。
「うーん、朝、自分から『おはよう』って言ってるかも」
「笑顔で朝ごはん食べてるかも」。
これが「解決した状態(ゴール)」の具体的なイメージです。
原因なんて解決しなくても、この「笑顔で朝ごはん」さえ実現できれば、実はそれでOKなのです。
「例外」を探せ! (例外探し)
次に、そのゴールに近づくための「リソース(資源)」を探します。
ここで大切なのが「例外探し」です。
問題は、24時間365日ずっと起きているわけではありません。
「勉強しない」と言っても、「少しは教科書を開いた時」や「宿題を半分やった時」が、
必ずあるはずです。
- 「全く勉強しない日と、5分でもやった日、何が違ったの?」
- 「どうやってその5分を作り出せたの?」
この「うまくいっていた例外(Exception)」の中にこそ、
その人独自の解決のヒント(成功パターン)が隠されています。
「ダメな時」ではなく「良かった時」に注目することで、再現可能な解決策が見つかるのです。
数字で現在地を知る「スケーリング・クエスチョン」
もう一つ、便利な技法が「スケーリング(数値化)」です。
「解決した状態(奇跡の日)を10点、最悪の状態を0点とすると、今は何点ですか?」
「うーん、3点かな」と返ってきたら、すかさずこう聞きます。
「なんで0点じゃなくて、3点も取れているの?」
これが魔法の質問です。
普通は「なんであと7点足りないの?」と聞きがちですが、
SFBTでは「すでにある3点分の努力」を認め、掘り下げます。
「まあ、学校には行ってるし…」
「宿題は出してないけど、授業は聞いてるし…」。
そう、「できていること」は意外とたくさんあるのです。
そして、「じゃあ、3点を3.5点にするために、明日何ができそう?」と、
ほんの小さな一歩(ベイビーステップ)を提案します。
まとめ:スモール・ステップでいい
解決志向が教えてくれるのは、「劇的な変化」なんていらないということです。
ほんの少しの「例外」を見つけ、ほんの少し数値が上がる行動をする。
その小さな雪玉が、やがて雪崩のように大きな変化を引き起こします。
「原因」を分析して暗くなるより、「解決」をイメージしてワクワクする。
それが、添育流の悩み解決法です。
次回、Vol.14は「NVC(非暴力コミュニケーション)」
解決策が見えても、それを相手にどう伝えるかで結果は変わります。
「正しいこと」を言うのではなく、「心がつながる」言葉を選ぶ。
評価や批判を手放し、お互いのニーズを満たすための「共感の言語」について解説します。




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