【添育理論Vol.11・技法編1】ただ聞くだけじゃダメ。「心の鏡」になって相手を映す「積極的傾聴(アクティブ・リスニング)」

添育(そういく/Soiku)

「添育(そういく)」を支える25の理論を巡る旅。

今回から、いよいよ実践的なスキルを学ぶ【技法編】に入ります。

 

みなさんは、「人の話を聞く」ことに自信がありますか?

「うんうん、聞いているよ」と言いながら、頭の中でこんなことを考えていませんか?

 

  • (次は自分が何を言おうかな…)
  • (それは間違っているな、後で訂正してやろう)
  • (あー、今日の夕飯何にしよう…)

 

これは「聞いている」のではなく、

「自分の順番を待っている」か「心の中でジャッジしている」状態です。

 

これでは、相手は「聞いてもらえた」とは感じません。

 

今回ご紹介する「積極的傾聴(アクティブ・リスニング)」は、

カウンセリングの世界で発展した、プロの「聞く技術」です。

 

土台は「エポケー(判断停止)」

 

技法に入る前に、絶対に外せない前提があります。

 

それは、前回(Vol.10)学んだ「エポケー(判断停止)」です。

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もしあなたが、心の中で「こいつはダメな部下だ」と決めつけたまま(色眼鏡をかけたまま)、

口先だけで「うんうん、大変だったね」と言ったらどうなるでしょうか?

 

相手は敏感にそれを察知します。

「あ、この人、心の中ではバカにしてるな」と。

 

これでは、どんな高度なテクニックも「操作」や「演技」に堕ちてしまい、

信頼関係は崩壊します。

 

積極的傾聴とは、まず自分の判断をカッコに入れ、

心を「空っぽの器」にすることから始まります。

 

あなたの意見、アドバイス、批判は一切必要ありません。

ただ、相手を受け入れるスペースを作るのです。

 

「鏡」になる技術(伝え返し)

 

では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

 

積極的傾聴の核心は、「鏡(ミラー)になること」です。

 

鏡は、前に立ったものを、良い悪いと判断せず、そのまま映し出しますよね。

 

それと同じように、相手が言ったこと、感じていることを、

そのまま言葉にして返してあげるのです。

これを「伝え返し(リフレクション)」と言います。

 

① 事実の伝え返し(オウム返し)

 

相手が使ったキーワードを、そのまま繰り返します。

 

  • 子:「今日、学校ですごく嫌なことがあって、もう行きたくないんだ」
  • 親(×):「何があったの? サボっちゃダメでしょ」(質問・批判)
  • 親(〇):「そっか、学校で嫌なことがあって、行きたくないんだね」(そのまま返す)

 

単純なオウム返しですが、言われた方は、

「あ、私の言葉がそのまま届いた(受け止められた)」という強い安心感を覚えます。

 

② 感情の伝え返し

 

さらに一歩進んで、言葉の裏にある「感情」をくみ取って返します。

 

  • 部下:「このプロジェクト、もう無理かもしれません…。誰も協力してくれないし…」
  • 上司(×):「弱音を吐くな。協力してもらう努力はしたのか?」(叱咤・アドバイス)
  • 上司(〇):「そうか。孤立無援な感じで、すごく辛くて、不安なんだね」(感情を言語化して返す)

 

相手がまだ言葉にできていないモヤモヤした感情に、

「それは『辛い』ってことだよね?」と、名前を付けて返してあげる。

 

これがピタッとはまると、相手は「そう! まさにそれが言いたかったの!」と、

深く理解された喜びを感じます。

 

なぜ、聞くだけで人は変わるのか?

 

「ただ繰り返すだけで、何の意味があるの? アドバイスしなきゃ解決しないでしょ?」

 

そう思うかもしれません。

 

しかし、人は自分の話を真剣に聞いてもらい、それを「鏡」のように返してもらうことで、

劇的な変化を起こします。

 

これを「オートクライン効果」と呼びます。

 

人は、自分が発した言葉を自分の耳で聞くことで、

「あ、私ってこんなことを考えていたんだ」「こんなに傷ついていたんだ」と、

初めて自分自身を客観視できるようになるのです。

 

聞き手は、相手が自分自身を整理するための「外部モニター」の役割を果たします。

 

アドバイスされなくても、十分に聞いてもらえれば、

人は自力で解決策を見つけ出す力(自己調整力・実現傾向)を持っています。

 

まとめ:同意しなくていい、受容しよう

 

積極的傾聴で最も大切なのは、「同意(Agree)」と「受容(Accept)」を混同しないことです。

 

「学校に行きたくない」という子どもに、

「そうだね、行かなくていいね」と同意する必要はありません。

 

ただ、「あなたは今、行きたくないと感じているんだね」と、

その事実をありのままに受け止める(受容する)だけでいいのです。

 

「どんなあなたでも、ここにいていいよ」

 

そのメッセージが伝わった時、相手の心に安全基地ができ、

次のステップへ進む勇気が湧いてきます。

 


 

次回は、技法編第2弾。

 

十分に話を聞いて信頼関係ができたら、次はいよいよ相手の「考える力」を引き出します。

 

指示命令ではなく、問いかけによって人を動かす技術、「コーチング」について解説します。

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