【添育理論Vol.3・核心編3】リーダーは「上」ではなく「下」に立つ。支配を捨てる覚悟」サーバント・リーダーシップ」

添育(そういく/Soiku)

 

前回まで、子どもたちが自律するための「環境(『学び合い』)」と「仕組み(自己調整学習)」についてお話ししてきました。

【添育理論Vol.1・核心編1】支配から信頼へ。教育のOSを書き換える『学び合い』
私が提唱する「添育(そういく)」は、指示や命令による「支配」を手放し、環境を整え、相手の自律的な成長を信じて「待つ」アプローチです。私はこれまで、教育学、心理学、脳科学、組織論などから、500近い理論を学び、それらを「人が自ら育つことに寄り...
【添育理論Vol.2・核心編2】自律のエンジンに灯を点ける。学習科学の決定版「自己調整学習」
前回は、教育のOSを『学び合い』に変え、子どもたち集団の力を信じて任せることの重要性をお話ししました。「よし、環境は整えた。みんなに任せたぞ!」意気揚々とスタートしたものの、現場ではすぐに次なる「壁」にぶつかります。 任せたのに、全然動き出...

 

「よし、環境は整えた。子どもたちのエンジンも信じよう!」

 

頭ではそう理解していても、いざ現場に立つと、

私たち大人の中にある「古いリーダー像」が邪魔をします。

 

「先生なんだから、ビシッと指導して導かなきゃ」

「親なんだから、常に正解を示さなきゃ」

「リーダーとして、先頭に立ってグイグイ引っ張らなきゃ」

 

私たちは無意識のうちに、リーダーとは「ピラミッドの頂点に立ち、命令する人」

だと思い込まされてきました。

 

しかし、添育が目指すリーダー像は真逆です。

 

私たちは、先頭には立ちません。

 

ピラミッドの頂点ではなく「一番下」に立つのです。

 

今回は、添育者の在り方を支える理論第3弾、

「サーバント・リーダーシップ」についてお話しします。

 

「俺についてこい」はもう古い?

 

『サーバント・リーダーシップ』は、ロバート・グリーンリーフという人が提唱した概念です。

直訳すると「奉仕型リーダーシップ」。

 

従来のリーダーシップが、権力を背景にした「支配型(Follow me / 俺についてこい)」だとするならば、

サーバント・リーダーシップとは、相手への奉仕を起点にした、

「支援型(How can I help you? / 何か手伝えることはある?)」です。

 

イメージしてください。

 

組織図のピラミッドを、くるっと逆さまにするのです(逆ピラミッド)。

 

一番上にいるのは、主役である子どもたち。

 

一番下で、全体が崩れないように支え、彼らが活動しやすい土台となるのが、

私たちリーダーです。

 

「偉い人(支配者)」になるのではなく、「役に立つ人(執事・サーバント)」になる。

 

これが添育の基本スタンスです。

 

「召使い」ではなく「庭師」であれ

 

「サーバント(奉仕者)」というと、「子どもの言いなりになる」「甘やかす」と誤解されることがあります。

 

しかし、それは違います。

 

私たちは、子どもたちの「わがまま」を聞くのではありません。

 

彼らの「成長(Growth)」のために奉仕するのです。

 

私はよく、自分を「庭師」だとイメージします。

 

庭師は、植物(子ども)を早く大きくしようと、無理やり引っ張ったりはしません(支配の放棄)。

 

その代わり、植物が自分の力で根を張るのを邪魔する「石」を取り除いたり、日当たりが悪ければ環境を整えたり、土を耕したりします。

 

植物が自ら育つ力を最大限に発揮できるよう、汗をかいて環境を整え、あとは生命力を信じて祈る。

 

これこそが、最も能動的で、強い意志を持った「奉仕」です。

  

添育スキルとしての「奉仕」

 

では、サーバント・リーダーとして具体的にどう動くのか?

 

添育の3つのスキルで見てみましょう。

 

  • 【整える】(障害の除去)

子どもが「やりたい」と思った時、それを邪魔する物理的な不便さや、過度なルールを取り

除きます。

彼らが走りやすいトラックを整備する裏方仕事に徹します。

 

  • 【観る】(共感的傾聴)

自分の言いたいこと(指導・アドバイス)をぐっと飲み込み、相手の声に耳を傾けます。

言葉だけでなく、その奥にある「本当はどうしたいのか(意志)」や「何に傷ついている

のか(感情)」を深く聴き取ります。

 

  • 【待つ】(長期的視点)

「今すぐ結果を出せ」と急かしません。

今は失敗していても、この経験が将来の糧になると信じ、長い目で成長を待ちます。

 

リーダーは「完璧」でなくていい

 

支配型のリーダーは、常に強く、正しくなければなりませんでした。

だから、弱みを見せられず、虚勢を張り、結果として孤独になります。

 

でも、サーバント・リーダーは違います。

 

「下」から支える私たちは、完璧である必要はありません。

 

「ごめん、先生もそこ間違えちゃった」

「これ、先生もわからないから、誰か教えてくれる?」

 

そうやってリーダーが自分の弱さ(脆弱性)をさらけ出すことで、

子どもたちは「あ、完璧じゃなくていいんだ」「先生も人間なんだ」と安心します。

 

そして、「先生が困ってるなら助けてあげよう!」と、子どもたちの中に

「フォロワーシップ(自律的な協力)」が芽生えるのです。

 

リーダーが降りていくことで、周りが上がり始める。

 

この逆転現象こそが、添育の醍醐味です。

  

まとめ:魔法の言葉「何か手伝える?」

 

今日から、子どもや部下にかける言葉を、一つだけ変えてみませんか?

 

「あれをやりなさい」という指示の代わりに、この魔法の言葉を使ってみてください。

 

「あなたがやりたいことのために、私は何ができる?」(How can I help you?)

 

主役は彼らです。

私たちは、最高の脇役(サーバント)になりましょう。

 

その覚悟が決まった時、あなたの肩の荷は驚くほど軽くなり、

子どもたちは驚くほど頼もしく変わっていくはずです。

 

 

次回は、サーバント・リーダーである私たちが、最初に整えなければならない「土壌」について。

 

どんなに良い種をまいても、土が恐怖で汚染されていたら芽が出ません。

 

自律が育つための必須条件「心理的安全性」

「ぬるま湯」と「安全な場」の違いとは?についてお話しします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました