前回まで、子どもたちが自律するための「環境(『学び合い』)」と「仕組み(自己調整学習)」についてお話ししてきました。


「よし、環境は整えた。子どもたちのエンジンも信じよう!」
頭ではそう理解していても、いざ現場に立つと、
私たち大人の中にある「古いリーダー像」が邪魔をします。
「先生なんだから、ビシッと指導して導かなきゃ」
「親なんだから、常に正解を示さなきゃ」
「リーダーとして、先頭に立ってグイグイ引っ張らなきゃ」
私たちは無意識のうちに、リーダーとは「ピラミッドの頂点に立ち、命令する人」
だと思い込まされてきました。
しかし、添育が目指すリーダー像は真逆です。
私たちは、先頭には立ちません。
ピラミッドの頂点ではなく「一番下」に立つのです。
今回は、添育者の在り方を支える理論第3弾、
「サーバント・リーダーシップ」についてお話しします。
「俺についてこい」はもう古い?
『サーバント・リーダーシップ』は、ロバート・グリーンリーフという人が提唱した概念です。
直訳すると「奉仕型リーダーシップ」。
従来のリーダーシップが、権力を背景にした「支配型(Follow me / 俺についてこい)」だとするならば、
サーバント・リーダーシップとは、相手への奉仕を起点にした、
「支援型(How can I help you? / 何か手伝えることはある?)」です。
イメージしてください。
組織図のピラミッドを、くるっと逆さまにするのです(逆ピラミッド)。
一番上にいるのは、主役である子どもたち。
一番下で、全体が崩れないように支え、彼らが活動しやすい土台となるのが、
私たちリーダーです。
「偉い人(支配者)」になるのではなく、「役に立つ人(執事・サーバント)」になる。
これが添育の基本スタンスです。
「召使い」ではなく「庭師」であれ
「サーバント(奉仕者)」というと、「子どもの言いなりになる」「甘やかす」と誤解されることがあります。
しかし、それは違います。
私たちは、子どもたちの「わがまま」を聞くのではありません。
彼らの「成長(Growth)」のために奉仕するのです。
私はよく、自分を「庭師」だとイメージします。
庭師は、植物(子ども)を早く大きくしようと、無理やり引っ張ったりはしません(支配の放棄)。
その代わり、植物が自分の力で根を張るのを邪魔する「石」を取り除いたり、日当たりが悪ければ環境を整えたり、土を耕したりします。
植物が自ら育つ力を最大限に発揮できるよう、汗をかいて環境を整え、あとは生命力を信じて祈る。
これこそが、最も能動的で、強い意志を持った「奉仕」です。
添育スキルとしての「奉仕」
では、サーバント・リーダーとして具体的にどう動くのか?
添育の3つのスキルで見てみましょう。
- 【整える】(障害の除去)
子どもが「やりたい」と思った時、それを邪魔する物理的な不便さや、過度なルールを取り
除きます。
彼らが走りやすいトラックを整備する裏方仕事に徹します。
- 【観る】(共感的傾聴)
自分の言いたいこと(指導・アドバイス)をぐっと飲み込み、相手の声に耳を傾けます。
言葉だけでなく、その奥にある「本当はどうしたいのか(意志)」や「何に傷ついている
のか(感情)」を深く聴き取ります。
- 【待つ】(長期的視点)
「今すぐ結果を出せ」と急かしません。
今は失敗していても、この経験が将来の糧になると信じ、長い目で成長を待ちます。
リーダーは「完璧」でなくていい
支配型のリーダーは、常に強く、正しくなければなりませんでした。
だから、弱みを見せられず、虚勢を張り、結果として孤独になります。
でも、サーバント・リーダーは違います。
「下」から支える私たちは、完璧である必要はありません。
「ごめん、先生もそこ間違えちゃった」
「これ、先生もわからないから、誰か教えてくれる?」
そうやってリーダーが自分の弱さ(脆弱性)をさらけ出すことで、
子どもたちは「あ、完璧じゃなくていいんだ」「先生も人間なんだ」と安心します。
そして、「先生が困ってるなら助けてあげよう!」と、子どもたちの中に
「フォロワーシップ(自律的な協力)」が芽生えるのです。
リーダーが降りていくことで、周りが上がり始める。
この逆転現象こそが、添育の醍醐味です。
まとめ:魔法の言葉「何か手伝える?」
今日から、子どもや部下にかける言葉を、一つだけ変えてみませんか?
「あれをやりなさい」という指示の代わりに、この魔法の言葉を使ってみてください。
「あなたがやりたいことのために、私は何ができる?」(How can I help you?)
主役は彼らです。
私たちは、最高の脇役(サーバント)になりましょう。
その覚悟が決まった時、あなたの肩の荷は驚くほど軽くなり、
子どもたちは驚くほど頼もしく変わっていくはずです。
次回は、サーバント・リーダーである私たちが、最初に整えなければならない「土壌」について。
どんなに良い種をまいても、土が恐怖で汚染されていたら芽が出ません。
自律が育つための必須条件「心理的安全性」
「ぬるま湯」と「安全な場」の違いとは?についてお話しします。


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