【添育理論Vol.20・学習メカニズム編5】心が折れても、また立ち上がる。竹のようなしなやかさ「レジリエンス」

添育(そういく/Soiku)

 

「添育(そういく)」を支える25の理論を巡る旅。

【学習メカニズム編】の最終回となる第5回目(通算Vol.20)は、「レジリエンス(Resilience)」です。

 

・テストで悪い点を取った。

・試合で負けた。

・友達と喧嘩した。

 

子どもが深く落ち込み、自信を失っている姿を見るのは、親として本当に辛いものですよね。

 

つい「気にしなくていいよ!」「次頑張ればいいじゃない!」と、慌てて励ましたくなってしまいます。

 

しかし、悲しみや挫折という「心の傷」は、絆創膏を貼ればすぐに治るものではありません。

 

大切なのは、傷つかないように守り抜くことではなく、「傷ついても、自分の力で立ち直れる力」を育てること。

 

それが「レジリエンス」という概念です。

 

レジリエンスは「鋼のメンタル」ではない

 

レジリエンスという言葉は、元々は物理学の用語で「外からの力が加わった時に、元の形に戻ろうとする力(弾力性・回復力)」を意味します。

 

よく誤解されるのですが、レジリエンスが高い人=「絶対に傷つかない、鋼(はがね)のようなメンタルの持ち主」ではありません。

 

叩かれても凹まない「鋼の心」は、一見強そうですが、自分の許容量を超える強い衝撃を受けた時、バキッと修復不可能に割れてしまいます。

弱音を吐かず、常にポジティブでいようと無理をしている人ほど、ある日突然心が折れてしまう危険性を持っています。

 

真のレジリエンスとは、強い風が吹いたらしなるけれど、風がやんだらまたスッと天に向かって伸びる「竹」のようなしなやかさのことです。

 

傷つくこと、落ち込むこと、泣くことを否定せず、そこから「ゆっくりと元の自分に戻っていく力」こそがレジリエンスなのです。

  

レジリエンスを育てる「3つの要素」

 

では、この「竹のような心」はどうすれば育つのでしょうか?

 

心理学の研究では、レジリエンスを高めるための重要な要素がいくつか挙げられています。

 

今回はその中から、家庭や教育現場で特に意識したい3つを紹介します。

 

① 感情を味わい、受け入れる(感情調整力)

 

心が折れた時、最初にやってくるのは「悲しい」「悔しい」「怖い」といったネガティブな感情です。

 

ここで「泣かないの!」「男の子でしょ!」「そんなことで落ち込まない!」と感情にフタをさせてはいけません。

 

ネガティブな感情は、嵐のようなものです。

 

無理に追い払おうとせず、安全な場所で嵐が通り過ぎるのを待つことが必要です。

 

「悔しかったね」「悲しいね」と、まずはその感情をそのまま受け止め、言葉にしてあげることで、子どもは「ネガティブな感情を持ってもいいんだ」と安心し、自分の感情をコントロールする土台を築きます。

 

② 「現実的な楽観性」を持つ(思考の柔軟性)

 

嵐が過ぎ去った後、物事をどう捉えるかが次のステップです。

 

ここで「どうせ自分はダメなんだ」と全てを否定的に捉える(硬直マインドセット)のではなく、

「今回はうまくいかなかったけれど、次は違うやり方を試せばいい(Vol.18の経験学習)」「まだできないだけだ(Vol.17のYET)」と考える力です。

 

根拠のない「なんとかなるさ」ではなく、現実を直視した上で「自分には乗り越える力がある」と信じること。

 

これが現実的な楽観性です。

 

③ 「助けて」と言える力(ソーシャルサポート)

 

実は、レジリエンスにおいて最も重要なのがこれです。

 

「自立」とは、何でも一人でできるようになることではありません。

 

「困った時に、適切に他者に頼れること」が真の自立です。

 

「自分には、いざという時に助けてくれる人(安全基地)がいる」という圧倒的な安心感こそが、

再び立ち上がるための最大のエネルギー源になります。

 

「失敗の先回り」が子どもの回復力を奪う

 

親として、子どもが傷つく姿を見るのは辛いものです。できれば失敗させたくない、転ばせたくないと思うのが親心でしょう。

私も、子どもが転んで泣きそうになるたびに、つい手を出して助け起こしてしまいたくなります。

 

しかし、先回りして障害物をどかし、「転ばぬ先の杖」を渡し続けてしまうと、子どもはどうなるでしょうか?

 

彼らは「転んだ経験」も「そこから立ち上がる経験」も得られないまま大人になってしまいます。

無菌室で育った心は、社会の荒波に出た時、ちょっとした風邪の菌(小さな失敗)で致命傷を負ってしまいます。

 

レジリエンスは、筋肉と同じです。

 

小さな負荷(失敗や挫折)をかけ、休息(慰めや共感)によって回復する。

この繰り返しでしか、強くしなやかな心は育ちません。

 

親がすべきなのは、転ばないようにすることではなく、「転んだ後の立ち上がり方」を教えることなのです。

 

添育者としての「最高のサポート」とは?

 

子どもが深い挫折を味わい、ボロボロになって帰ってきた時。

 

添育者である私たちにできる最高のサポートは、問題を解決してあげることでも、正論でアドバイスすることでもありません。

 

ただ、温かい飲み物を用意して、横に座り、「大変だったね。何があったの?」と静かに耳を傾けること。

 

「あなたがどんなに失敗しても、ここ(家庭)は絶対にあなたをジャッジしない、安全な場所だよ」というメッセージを、態度で示すことです。

 

そして、子どもが十分に休んで、ふと顔を上げた時に、

「で、これからどうする(したい)?」

と、フラットに問いかけてあげることです。

 

私たち大人が「この子なら、絶対に自分の力で立ち直れる」と信じて待つこと(足場外し)。

その絶対的な信頼の眼差しが、子どもの心に「竹のしなやかさ」を育てていきます。

 

まとめ:失敗は「人生の句読点」にすぎない

 

いかがだったでしょうか。

 

ZPDという舞台に立ち、グロースマインドセットを胸に、経験学習のサイクルを回し、フローに没頭する。

そして、もし倒れても、レジリエンスの力で再び立ち上がる。

 

これが、人間が最も美しく「学ぶ(成長する)」プロセスです。

 

失敗は、物語の終わりではありません。次の章へ進むための、ただの「句読点」です。

 

お子さんが失敗した時こそ、「おっ、レジリエンスの筋肉を鍛えるチャンスが来たな!」と、心の中で少しだけガッツポーズをする。

 

そんな心の余裕を持てると良いですね。

 


 

さて、全5回にわたってお届けした【学習メカニズム編】はこれで完結です。

 

「学び」というものが、どれほど繊細で、ダイナミックで、人間らしい営みであるかを感じていただけたなら嬉しいです。

 

次回からは、【環境・コミュニティ編】に突入します!

 

その第1弾(Vol.21)は、「正統的周辺参加(LPP)」について。

 

学びは、一人で机に向かっている時だけでなく、「共同体(コミュニティ)に参加するプロセス」そのものに存在します。

 

新参者がどうやってその場の「中心メンバー」になっていくのか、コミュニティづくりの本質に迫ります。

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