「添育(そういく)」を支える25の理論を巡る旅。
技法編の第2回目は「コーチング」です。
みなさんは、子どもや部下が困っている時、こんな風に言っていませんか?
- 「それはね、こうすればいいんだよ」
- 「前にも言ったでしょ、AじゃなくてBだよ」
良かれと思って「正解(アドバイス)」を教えてあげているつもりかもしれません。
しかし、実はこれが、相手の「考える力」を奪い、
あなたへの「依存」を生む最大の原因になっているとしたらどうしますか?
ティーチングとコーチングの決定的な違い
まず、言葉の定義をはっきりさせましょう。
- ティーチング(Teaching):
- 方向: 外 ⇒ 内(Input)
- 前提: 相手は「知らない」。答えは「私が持っている」。
- 結果: 知識が増える。
- コーチング(Coaching):
- 方向: 内 ⇒ 外(Output)
- 前提: 相手は「答えを持っている」。私は「引き出す人」。
- 結果: 思考力が育つ。やる気が湧く。
学校の授業のように「知識」がない段階ではティーチングが必要です。
しかし、「どうやって問題を解決するか」「どう生きたいか」という場面でティーチング(答えの押し付け)をすると、
相手は「先生(親)が言うなら、そうします」と思考停止してしまいます。
添育が目指す「自律」のためには、このベクトルを逆転させ、
内側から引き出すコーチングが不可欠なのです。
脳は「空白」を嫌う
なぜ、コーチング(問いかけ)が有効なのでしょうか?
それは、人間の脳の「空白を埋めたがる性質」を利用するからです。
「今日の晩ご飯、何にする?」と聞かれた瞬間、
あなたの脳は勝手に冷蔵庫の中身を検索し始めませんでしたか?
人間は、問われると、答えを探さずにはいられない生き物なのです。
- 指示: 「部屋を片付けなさい!」
- 脳の反応: 「命令された。(反発 or 服従)」
- 問い: 「どうしたら、もっと気持ちよく過ごせる部屋になるかな?」
- 脳の反応: 「うーん、どうすればいいだろう?(検索開始)」
この「検索」のプロセスこそが、自走スイッチが入った瞬間です。
「Why(なぜ)」ではなく「What(なに)」で問う
コーチングで最も重要なテクニックの一つが、質問の言葉選びです。
特に注意が必要なのが「Why(なぜ)」です。
失敗した時、「なぜ失敗したの?」と聞かれると、どう感じますか?
多くの場合、それは「原因追求」ではなく「非難」に聞こえます。
「私が悪かったです」「注意力が足りませんでした」という言い訳しか出てきません。
未来に向かわせるためには、「What(なに)」や「How(どうやって)」を使います。
- × 過去・非難:
「なぜ宿題やらなかったの?」(→やろうと思ったけど時間がなくて…と言い訳)
- 〇 未来・解決:
「何(What)があれば(なければ)、宿題ができそうかな?」
(→時間を決めることかな? ゲームを隠すことかな?)
「どうやって(How)その壁を乗り越える?」
(→友達と一緒にやればできるかも!)
「なぜ」は過去の言い訳を作り、「なに」は未来の解決策を作ります。
答えは相手の中にしかない(オートポイエーシスとの接続)
Vol.9の『オートポイエーシス』で学んだ通り、私たちは他者をコントロールできません。

だからこそ、コーチングの鉄則は「答えは相手の中にある」と信じ抜くことです。
たとえ相手の答えが、あなたの想定した「正解」と違っていても、それを否定してはいけません。
「なるほど、そう考えたんだね。じゃあ、それをやったらどうなりそう?」とさらに問うのです。
自分が考え、自分で決めたこと(Vol.5 自己決定理論)だからこそ、人は責任を持って実行します。

教えられた正解よりも、自分でひねり出した「未熟な答え」の方が、その子を何倍も成長させるのです。
まとめ:沈黙を恐れない
コーチングを始めると、問いかけた後に長い「沈黙」が訪れることがあります。
多くの大人は、これに耐え切れず、
「つまり、こういうことでしょ?」と助け舟(答え)を出してしまいます。
でも、待ってください。
その沈黙は、相手の脳内で「エンジンの回転数が上がっている音」です。
一生懸命、自分の中の答えを探している、最も尊い時間です。
だから、笑顔で待ってください。
あなたの「待ち」が、「あなたなら答えを出せる」という信頼のメッセージになります。
次回、Vol.13は「解決志向ブリーフセラピー(SFBT)」。
コーチングをさらに「問題解決」に特化させた、最強のポジティブ・アプローチです。
「原因なんて探さなくていい。解決像だけ作ればいい」という、
目からウロコの心理療法をご紹介します。
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