【添育理論Vol.24・キャリア創造編1】予測不能な未来を「手持ちのカード」で切り拓く!起業家の論理「エフェクチュエーション」

添育(そういく/Soiku)

 

「添育(そういく)」を支える25の理論を巡る旅。

いよいよ今回から、最終章となる【キャリア創造編(未来を創る)】に突入します!

 

AIがすさまじいスピードで進化し、数年先の社会がどうなっているか、誰にも予測できない時代(VUCAの時代)を生きています。

 

そんな中、子どもたちに「将来の夢は何?」「10年後、どうなっていたい?」と具体的な目標を持たせ、そこから逆算して計画を立てさせる従来の教育(キャリア教育)は、少し限界を迎えているのかもしれません。

 

なぜなら「目指していたはずの職業が、10年後には消滅しているかもしれない」からです。

 

では、予測不能な未来に対して、私たちはどう立ち向かえばいいのか。

 

そのヒントは、まさに「誰も見たことのない未来(新しいビジネス)」を日々創り出している「熟練の起業家(シリアル・アントレプレナー)」たちの頭の中にありました。

 

彼らの思考プロセスを科学的に体系化したのが、バージニア大学のサラス・サラスバシー教授が提唱した「エフェクチュエーション(Effectuation)」です。

 

「コーゼーション(因果論)」と「エフェクチュエーション(実効論)」

 

従来の私たちが学校や社会で教わってきたのは、「コーゼーション(Causation:因果論)」という思考法です。

 

これは、「まず明確な目標を設定し、それを達成するための最適な手段を選ぶ」というアプローチです。

 

例えるなら、「今夜は絶対に極上のフレンチコースを作る!」と決め、レシピを調べ、スーパーに足りない食材を買い出しに行くようなものです。

 

未来が予測可能で、正解が決まっている場合には非常に強力です。

 

しかし、熟練の起業家たちは全く逆の思考、「エフェクチュエーション(Effectuation:実効論)」を使っていました。

 

これは、「今、自分の手元にある手段(手持ちのカード)からスタートし、何が生み出せるかを想像しながら行動する」というアプローチです。

 

例えるなら、「とりあえず冷蔵庫を開けてみて、残っている野菜と卵と昨日の残り物で、何か美味しいものが作れないかパパッと試してみる」という戦い方です。

 

目的地すら決まっていませんが、状況に合わせて柔軟に対応できるため、変化の激しい未開の地では圧倒的に強いのです。

  

未来を創る「5つの原則」

 

サラスバシー教授は、この起業家たちの「冷蔵庫にあるもので美味しいものを作る」思考を、

5つの美しい原則にまとめました。

 

これはビジネスだけでなく、子育てや教育、人生そのものに使える強力な武器になります。

 

① 手中の鳥の原則(Bird-in-hand)

 

「自分には何が足りないか」ではなく、「自分は誰か(アイデンティティ)」「何を知っているか(知識・スキル)」「誰を知っているか(人脈)」という、すでに手の中にあるものからスタートします。

 

「お金がない」「時間がない」と嘆くのではなく、「今ここにあるもの」で何ができるかを考えます。

 

② 許容可能な損失の原則(Affordable loss)

 

「どれくらい儲かるか(期待利益)」よりも、「最悪の場合、どれくらいなら損しても大丈夫か(許容可能な損失)」を基準に行動します。

 

致命傷にならない小さな失敗(損失)の範囲内であれば、とにかくすぐに試してみる。

これはVol.18の「経験学習」を高速で回すための安全装置です。

 

③ クレイジーキルトの原則(Crazy quilt)

 

競合を分析して打ち負かすのではなく、目的がまだ曖昧な段階から、出会った人々と協力関係(パートナーシップ)を結び、一緒に新しい未来のパッチワーク(キルト)を縫い合わせていきます。

 

「誰とやるか」で目的地自体が変わっていくことを楽しむ。まさに「ピア・ラーニング(学び合い)」の精神です。

 

④ レモネードの原則(Lemonade)

 

アメリカの格言に「酸っぱいレモンを渡されたら、甘くて美味しいレモネードを作れ」というものがあります。

 

予期せぬトラブルや偶然の出来事(サプライズ)を、「計画の邪魔」として排除するのではなく、「新しいものを作るための最高のスパイス」として積極的に活用する姿勢です。

 

⑤ 飛行機のパイロットの原則(Pilot-in-the-plane)

 

未来は「予測する」ものではなく、「自分たちの手で創り出す」もの。

 

自動操縦に任せたり、天気を予測して怯えたりするのではなく、自らがパイロットとして操縦桿を握り、自分のコントロールできる範囲のことに集中して行動を起こすという、エフェクチュエーション全体の要となる考え方です。

  

子どもはみんな、生まれながらの「起業家」

 

この5つの原則を見て、何かにお気づきでしょうか。

 

そう、小さな子どもたちの遊び方は、まさにエフェクチュエーションそのものなのです。

 

例えば、小さな子どもが積み木や部屋にある日用品で遊ぶ時。

 

彼らは「立派なお城を作る」という完成予想図(コーゼーション)を持っていません。

 

手元にあるブロックや空き箱を(手中の鳥)、とりあえず積んだり崩したりしてみて(許容可能な損失)、偶然変な形に組み上がったら「あ、これ車みたい!」と意味づけを変え(レモネード)、親や友達を巻き込みながら(クレイジーキルト)、今この瞬間の遊びを全力で創り出しています(パイロット)。

 

子どもたちは皆、生まれながらにして優れたアントレプレナー(起業家)の思考を持っています。

 

しかし、大人が「これはこうやって遊ぶものよ」「まずは計画を立てなさい」と正解を押し付けることで、「冷蔵庫のあり合わせで魔法を生み出す力」を少しずつ奪ってしまっているのかもしれません。

 

添育が目指す「未来の創り方」

 

「添育(So-iku)」において、大人が子どもにできる最高のキャリア教育とは何でしょうか。

 

それは、10年後の未来を予測して「食いっぱぐれない職業」を教え込むことではありません。

 

「今、あなたが持っている興味(好き)と得意なこと(手中の鳥)は何?」

「失敗しても死なないから(許容可能な損失)、今すぐできる一番小さな一歩を試してみよう!」

 

そう背中を押し続けることです。

 

そして、予想外の失敗やトラブルが起きた時には、一緒に笑いながら「さあ、この酸っぱいレモンで、どうやってとびきりのレモネードを作ろうか?」と問いかける(育ちに添う)こと。

 

未来の正解を教えるのではなく、「未来を自分たちで創り出すための論理」を共有するのです。

 

まとめ:計画を手放し、今あるカードで遊び尽くす

 

いかがだったでしょうか。

 

エフェクチュエーションの考え方は、不確実な世界を生きる私たちに「圧倒的な自由」と「行動する勇気」を与えてくれます。

 

「何者かにならなければ」「完璧な計画を立てなければ」という呪縛から自分を解放し、今目の前にあるカードと、隣にいる仲間と共に、人生という壮大なゲームを楽しみ尽くしましょう。

 


 

次回、いよいよこの添育理論シリーズを締めくくる大トリ、Vol.25は「プランド・ハプンスタンス(計画された偶発性理論)」です。

 

エフェクチュエーションの「レモネードの原則」とも深く繋がるこの理論。

 

個人のキャリアの8割は「偶然」によって決まるという衝撃の事実から、その偶然をどうやって「必然のチャンス」へと変えていくのか。

 

「生きる力」の真髄に迫る最終回、どうぞお楽しみに!

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